躾、あるいは……。
冷淡な声に指摘されるよりも先に、
自らの間違いに気付いたジノは、
灼ける様な痛みを思い出して、
びくりと身を竦めた。
空気を裂く音が鼓膜を掠め、
恐怖しながらも、
おずおずと両の掌を差し出した。
過日の仕置きに鞭打たれて出来た傷は、
白く柔らかな皮膚に、
未だ痛々しいほどの赤みを残していた。
ルキアーノは加減などしなかった。
ジノはきつく目を閉じ、
記憶された苦痛の瞬間が訪れるのをじっと待った。
永らく受けない衝撃に、
ゆるゆる瞼を開くと、
手首を掴んで引き寄せられ、
幼い身体がよろめいた。
別な責め苦を受けるのかと、
少年は青褪めた。
「……ぁ…ッ…」
掌に深くくちづけ、
温かな舌先が傷痕を丁寧になぞった。
「罪深い仔猫だ。」
囁いて、
小さな耳翼を甘噛みした。
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